確定拠出年金が導入された背景
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確定拠出年金は、”環境”の変化を理由に導入されました。終身雇用前提の企業年金制度と、変動する日本社会の雇用の形にはズレが生じています。企業では積立金が負担となっていて、退職給付債務が重荷になるケースは珍しくありません。確定拠出年金は、多様化する現状に対応しようと作られた制度です。
環境の変化で導入された確定拠出年金制度
確定拠出年金制度導入の背景には、公的年金、退職給付制度、雇用それぞれを巡る環境の変化があります。
公的年金は少子化や高齢化で支払う側の負担が大きくなり、同時に給付水準が低く、支給開始年齢は高くなりました。超低金利が長引いて企業は企業年金が積み立てづらくなり、退職給付会計は企業の評価に影響を与えています。契約社員や人材派遣による雇用の多様化が現れた他、終身雇用制から能力主義に変わりつつあります。財務戦略では退職給付債務の圧縮と、予想と異なった利益から発生する追加負担の解放が課題となりました。人事制度面でも雇用の流動化、多様化に対応しつつ、優秀な人材を確保するために退職金や年金制度が見直されて、確定拠出年金制度が導入されました。
退職給付債務の圧縮と利差損による追加負担の解放
確定拠出年金導入の原因は、終身雇用制度の崩壊だけではありません。退職給付義務などの削減も可能で、企業側にもメリットがあります。
退職給付債務とは、退職後の従業員へ渡される給付で、現時点までに発生した労働に基づいて割り引いて算定されるものです。退職給付見込額は、退職が自己都合か会社都合か、支給方法が一時金か年金か、どちらかであるか踏まえた上で計算されます。
退職給付見込額で期日までに発生する額を計算して、退職時期までの期間に対する現在価値に割り引いた金額を合計したものが退職給付債務です。
将来の給付の資産は積立不足に陥りやすく、企業の債務の圧迫が問題視されています。確定拠出年金制度では、拠出以降に将来の退職給付に負担が追加されることはありません。
確定拠出年金は利差損を、利率が予測よりも下回ったときに掛金を見直して、企業の掛金にかかる負担を抑えることができます。
流動化、多様化する雇用への対応と優秀な人材の確保
従来の企業年金制度は、終身雇用を前提としています。会社がまとめた成果は将来支給される予定のため、早期に転職した場合には与えられません。確定拠出年金では転職しても年金資産を自分自身で持って、運用することができます。
人材確保もしやすくなります。会社が確定拠出年金制度を導入していると、転職前に確定拠出年金資産を引き継いだ人材が、躊躇なく転職できるようになるからです。
まとめ
確定拠出年金は、年金制度が見直されつつある中で期待されている新たな選択肢です。個人に限らず、公的年金と異なる独自性や負担の少なさは企業から注目を浴びています。